社内DXとは、経理や人事、情報共有といった社内の業務を、デジタルを前提とした形へ組み替える取り組みです。この記事では、社内DXが「ツールを入れて終わり」になりやすい理由から、進め方の4ステップまでを解説します。あわせて、実際に現場で使われ続けた事例と、定着しない場合の原因も取り上げます。何から着手すべきか迷っている中小企業の経営者や推進担当の方に向けた内容です。
社内DXとは何か
社内DXとは、社内で日々行われている業務の進め方そのものを、デジタルを前提として作り直す取り組みを指します。紙をデータに置き換えるだけの作業とは区別されます。
顧客向けのサービスをデジタル化する取り組みと比べると、成果が見えにくい性質があります。売上に直接つながらないため、後回しになりやすい領域でもあります。
一方で、社内DXが進まないと、人手が増えないまま業務量だけが増える状況になります。少人数で運営する会社ほど、影響は早く表れます。
この記事では、社内業務をどう変えるかという実務側に絞って解説します。現場心理を含む導入全体はシステム導入が現場で使われない理由も参考にしてください。
社内DXの進め方4ステップ
進め方の基本は、範囲を絞って確かめながら広げることです。全社一斉に変えると、問題が起きたときに原因を特定できなくなります。
ステップ1 業務を棚卸しする
誰が何を何回やっているかを書き出します。頻度、所要時間、情報の受け渡し先の3つが分かると、優先順位をつけられます。
この段階で、そもそもやめられる業務が見つかることもあります。デジタル化する前に、なくせないかを確認する価値があります。詳しい手順は業務棚卸で解説しています。
ステップ2 着手する業務を1つ選ぶ
頻度が高く、複数人が関わり、間違いの影響が大きい業務を選びます。この3つが揃う業務は、改善したときの効果が最も分かりやすくなります。
逆に、月に1度しか起きない業務や、担当者一人で完結する業務は後回しで構いません。変更の説明にかかる手間が、得られる効果を上回りやすいためです。
ステップ3 現場の手順に合わせて作る
ここが社内DXの成否を分ける段階です。新しい手順を覚えてもらう前提で作ると、現場は元のやり方に戻ります。
普段やっている順序をそのまま画面の並びにする、すでに毎日開いている場所に置く、といった配慮が定着を左右します。機能の多さより、迷わず使えるかどうかが重要になります。
ステップ4 定着を確認してから次へ
手応えが出たら次の業務に移ります。定着したかどうかは、古いやり方が併用されていないかで判断できます。
併用が続いている場合、新しい仕組みのどこかに使いにくさが残っています。範囲を広げる前に、そこを直す方が結果的に早く進みます。
事例:現場で使われ続けた仕組み
社内DXの事例として、筆者自身の経験を紹介します。
プログラミング教室の運営に携わっていたとき、感染症の影響で教室を閉じることになりました。授業を止めるわけにはいかず、1週間で授業の仕組み全体をオンラインへ移す必要がありました。
このとき意識したのは、使う相手が子どもだという点です。操作説明を読んでから使う形にすると、そもそも始まりません。そこで、ゲームのような画面設計にして、説明なしで自発的に進められる形にしました。
あわせて、保護者向けの報告も見直しました。講師が別途レポートを書くのではなく、授業のなかで記録された内容が、そのまま学習の進捗として保護者に届くようにしました。報告のための作業を新しく増やさない設計です。
環境が用意できない家庭には、必要な環境を入れたUSBを郵送するという方法をとりました。理想的な解決策ではありませんが、その時点で全員が授業を受けられる状態を優先しました。
この経験から言えるのは、社内DXで問われるのは技術の新しさではなく、使う人の状況に合わせられるかどうかだという点です。



