経理の自動化とは、申請の受け取りから仕訳、支払、突き合わせまでを、手入力に頼らず記録が残る形へ組み替えることです。この記事では、会計ソフトを入れたのに手作業が減らない理由を4つの領域に分けて整理し、着手する順序と進め方を解説します。経理の負担を減らしたいものの、どこから手をつけるべきか判断がつかない中小企業の方に向けた内容です。
経理を自動化しても手作業が減らない理由
経理の自動化がうまくいかないとき、原因の多くは会計ソフトの手前にあります。仕訳を自動化しても、そこへ届くまでの経路が手作業のままなら、全体の時間は変わりません。
入口が紙とメールのまま残っている
最も多い原因がこれです。領収書が紙で回り、申請がメールで届く状態のまま会計ソフトを導入すると、担当者は紙とメールを見ながら入力する作業を続けることになります。
自動化の効果は、業務の一番細い部分で決まります。入口が手作業であれば、そこが処理量の上限になります。まず変えるべきは、情報がどう入ってくるかです。
データの粒度が合っていない
もうひとつの原因は、集める情報の細かさが揃っていない点です。1件の明細に複数の案件が混ざっている、部門の割り当てが後から決まるといった状態では、機械的な処理ができません。
この状態は二重管理と同じ構造を持っています。同じ情報が別の粒度で複数の場所にあると、突き合わせのための確認作業が新しく生まれます。
経理の自動化を4つの領域に分けて考える
経理の自動化を検討するときは、業務をまとめて捉えず、4つの領域に分けると判断しやすくなります。領域ごとに、自動化しやすさが大きく違うためです。
- 申請:経費や支払の依頼を受け取る領域
- 承認と支払:内容を確認し、実際に支払う領域
- 仕訳:取引を会計の形に置き換える領域
- 突合:請求と入金、明細と記録を突き合わせる領域
このうち仕訳は、クラウド会計ソフトの得意分野です。一方で申請と突合は、業務側の設計がないと自動化が進みません。多くの会社が「会計ソフトを入れたのに楽にならない」と感じるのは、負担の重心が仕訳ではなく申請と突合にあるためです。
自動化しやすい領域
申請の受け取りと、仕訳の一部は比較的進めやすい領域です。入力の形式を決めてしまえば、以降は同じ手順で処理できます。
申請については、入力項目を絞ることが効果を左右します。項目が多いほど現場は入力せず、結局は口頭やメールで届くようになります。
自動化しにくい領域
難しいのは、例外処理の判断と突合です。金額が一致しない、明細に複数の案件が混ざっている、支払が分割されているといった場面では、人の判断が入ります。
ここを完全になくすことは現実的ではありません。むしろ、例外をどう扱うかのルールを先に決めておく方が、結果として手が止まらなくなります。
筆者は宿泊事業の会社で、経費の申請から支払、精算、そして会計への計上までを一続きに設計する仕事に関わってきました。着手前は仕訳の自動化が課題だと考えていましたが、実際に時間を奪っていたのは申請の受け取りと、入金の突き合わせでした。順序としては、まず入口を整え、次に突合のルールを決め、最後に会計へ繋ぐ流れが機能しています。
経理の自動化の進め方
進め方の基本は、範囲を広げすぎないことです。決算期をまたぐ変更は現場の負担が大きいため、影響範囲の小さい業務から始めます。
まず、経費や支払の申請がどこから入ってくるかを洗い出します。紙、メール、口頭、チャットなど、経路が複数あるほど手作業が発生しています。ここを1つに寄せるだけでも、確認の手間はかなり減ります。
次に、入力の形式を決めます。誰が、いつ、何を入れるかを固定すると、後工程が機械的に処理できるようになります。項目は必要最小限に絞る方が定着します。
そのうえで、突合のルールを言葉にします。金額が一致しない場合にどうするか、どこまでを許容するかを決めておくと、判断のたびに止まることがなくなります。
最後に、会計への計上まで繋ぎます。日々の業務を回すだけで数字が揃う状態になれば、月次の集計そのものが軽くなります。エクセルでの管理から移行する順序については、脱エクセルもあわせて参考にしてください。
請求後の確認が重い場合は入金消込を自動化する方法、毎月の相手別計算が重い場合は精算書を自動作成する方法、複数ツール間の転記が残る場合はSaaSと会計ソフトを連携する方法で具体的な進め方を整理しています。
規模が大きくなり、複数の業務をまとめて扱う段階になった場合は、中小企業のERP導入で扱う考え方も判断材料になります。
