不動産の実務では、購入申込書から賃貸管理委託契約書、物件チラシまで、日々さまざまな書式を使います。この記事では、小規模の不動産会社や大家の方が無料で使えるエクセルなどのテンプレートを、正式なひな形がどこで手に入るのかとあわせて整理します。賃貸管理委託契約書のエクセル様式、不動産の購入申込書のテンプレート、チラシや物件資料の無料テンプレートを扱います。正しい入手先と、自社流に直すときの注意点をまとめました。担当者ごとにバラバラな書式を揃えたい、抜け漏れや属人化を減らしたいという方が、次に何を整えればよいかを判断できる状態を目指した内容です。
書式を整えると、担当者ごとのバラつきと抜け漏れが減る
先に結論をお伝えすると、書式を揃える一番の効果は、誰が対応しても同じ品質の書類が出せるようになることです。テンプレートは見た目を整える道具に見えますが、本当の役割は、業務の質を人に依存させないことにあります。
書式が揃っていない現場では、次のような問題が起きがちです。
- 担当者ごとに使う様式が違い、記載する項目にもばらつきが出る
- ベテランは覚えている必須項目が、若手の書類では抜けている
- 過去のファイルをコピーして使い回すうちに、少しずつ内容が古くなる
- その人が休むと、どの書式をどう使うのかが誰にもわからなくなる
これらはすべて、書式が個人の頭の中や各自のパソコンに散らばっていることから生まれます。決まった項目を埋めれば書類が完成するテンプレートを共通で持っておけば、記載漏れは構造的に起きにくくなります。属人化を防ぐという意味でも、書式の整備は仕組み化の第一歩になります。
以降では、売買・賃貸管理・販促の3系統に分けて、どこで正式なひな形が手に入るのかを見ていきます。
売買系の書式は、業界団体の様式をたたき台にする
売買系の書式で押さえたいのは、購入申込書のように様式が決まっていないものと、契約書のように統一書式が用意されているものを分けて考えることです。この違いを知らずに手探りで作ると、遠回りになりがちです。
不動産の購入申込書、いわゆる買付証明書には、法律で定められた統一の書式がありません。全日本不動産協会の解説でも、買付証明書は将来買い受ける希望を示すものにすぎず、これだけで売買契約が成立するわけではないと整理されています。決まった様式がないぶん、物件の表示・購入価格・支払条件・有効期限といった項目を押さえていれば、各社で見た目が違っても問題ないとされています。ゼロから作る必要はなく、エクセルの無料テンプレートや、後述する団体の様式をたたき台にするのが早道です。
一方、売買契約書や媒介契約書は、業界団体が整えた統一書式があります。全宅連は会員向けの業務支援サイトで、売買契約書・媒介契約書・重要事項説明書などの書式を提供しています。全日本不動産協会にも同様の会員向け書式があります。宅建業の団体に加入していれば、まずはこうした公式の書式を土台にするのが安全です。
自社仕様にカスタマイズするときは、独自の特約や社内ルールを足すのはよいのですが、法令や標準様式が求める必須事項を消してしまわないよう注意してください。とくに重要事項説明のような法的な書式では、様式を大きく崩すのは避け、追記の形で自社色を出すのが無難です。団体の書式は法改正に合わせて改訂されることがあるため、自社で保存したファイルを使い続けず、定期的に最新版を確認する習慣も持っておくと安心です。
賃貸管理系の書式は、国交省の標準様式が起点になる
賃貸管理系の書式では、賃貸管理委託契約書に公的な標準様式がある点をまず押さえてください。ここを知っているかどうかで、ひな形探しの手間が大きく変わります。
国土交通省は、賃貸住宅標準管理受託契約書という標準様式を公開しています。これは賃貸住宅の管理を受託する際の委託内容や責任範囲を定める契約書のひな形で、賃貸住宅管理業の適正化を目的に策定されたものです。原本はWordやPDF形式で国交省のサイトから入手でき、これを自社の管理範囲に合わせて調整して使うのが一般的です。「賃貸管理委託契約書 エクセル」で探すと出所の不明なファイルも多く見つかりますが、まずはこの公的な様式を起点にすると安心です。
管理業務に付随する書式も、あわせて整えておくと運用が回りやすくなります。入居者への更新案内のように、時期が来るたびに送る定型の書類は、テンプレート化の効果が特に大きい領域です。更新案内の文面や送付のタイミングの整え方は、更新案内の書き方と送付の仕組みで具体的に扱っています。
家賃の入金や滞納の管理表も、書式として揃えておきたいものの一つです。ただし家賃管理表は、件数が増えるとエクセルでの手管理が頭打ちになりやすい領域でもあります。エクセルで作る場合の型と、脱エクセルを考える時期の見分け方は、家賃管理表をエクセルで作る方法で整理しています。契約書のような一度作れば長く使う書式と、家賃管理表のように毎日更新する書式は、性質が違うと意識して分けておくと管理しやすくなります。
販促系の書式は、必要な表示事項を満たす枠にする
チラシやマイソクといった販促系の書式では、デザインの前に、不動産広告のルールを満たす枠になっているかを確認することが大切です。ここを外すと、見栄えがよくても掲載できない書類になってしまいます。
物件チラシやマイソクの無料テンプレートは、エクセル形式のものが多く出回っています。各地の宅建協会が物件概要書のエクセル様式を配布しているほか、ビジネス書式の配布サイトでも売買用・賃貸用の物件概要書テンプレートが無料で手に入ります。まずはこうしたテンプレートを土台にして、自社のロゴや連絡先の枠を足していくのが現実的です。マイソクの作り方そのものを詳しく知りたい場合は、マイソク作成を効率化する方法もあわせてご覧ください。
テンプレートを選ぶときに見てほしいのが、必要な表示事項が入る枠になっているかどうかです。不動産広告では、取引態様・免許番号・所在地・面積・価格などの必須項目や、文字の大きさに関するルールが公正取引協議会などによって定められています。項目を後から無理に詰め込むと窮屈になるため、最初から必須項目の場所が確保されたテンプレートを選ぶと安全です。
もう一つ気をつけたいのが、おとり広告にあたる表記です。すでに成約した物件や、取引する意思のない物件を客寄せのために載せ続けると、おとり広告として問題になるおそれがあります。人が住んでいた部屋を「新築」と表示するような誇大な表記も、同じく避けたいところです。チラシの書式は、最新の募集状況にすぐ差し替えられる作りにしておき、古い情報が残らない運用とセットで考えてください。
書式は最新版を一元管理し、「_最新2」問題を防ぐ
書式を作ったあとに効いてくるのが、どれが最新版かを迷わない管理方法です。テンプレートを整えても、最新版がわからなければ、結局は古い書式が使われ続けてしまいます。
多くの現場で起きるのが、いわゆる「_最新2」問題です。ファイル名に「最新」「最終」「_v2」などを付け足していくうちに、どれが本当の最新版なのかが誰にもわからなくなる状態です。これを防ぐには、書式の原本を1か所に集め、そこだけを更新する場所と決めておくのが基本になります。各自のパソコンにコピーを置かず、共有の保管場所にある1つの原本を全員が参照する形にします。
書式を設計する段階で意識したいのが、変わる情報と変わらない情報を分けておくことです。会社名・免許番号・ロゴのようにほとんど変えない情報は固定の枠に置き、物件名や価格のように毎回書き換える情報だけを差し替えればよい状態にしておきます。この切り分けができていると、法改正などで固定情報を直すときも原本の1か所を直すだけで済み、更新漏れが起きにくくなります。原本を更新したら、いつ何を変えたのかを一言そえて残しておくと、あとから経緯を追いやすくなります。同じ書式が複数の場所にバラバラに存在して食い違う状態は、二重管理と呼ばれる典型的な非効率です。原本を1つに保つことは、その予防にもつながります。
書式が揃ったら、次は「入力の回数」を減らす
書式を整えたあとに残るのが、同じ情報を何度も書き写す作業です。ここに気づけるかどうかで、効率化がもう一段先に進むかが決まります。
テンプレートが揃うと、1枚あたりの作成は速くなります。ただ、購入申込書に書いた物件名や価格を、契約書にも、社内の管理表にも、チラシにも同じように打ち込む転記の作業は残ります。書式を整えるだけでは、この「同じ情報を入力する回数の多さ」までは解けません。転記が多いほど、打ち間違いの機会も比例して増えていきます。
筆者は以前、営業代行の会社で数百件規模の営業活動の管理を担当していました。当初は担当者ごとのシートに情報が散らばり、同じ内容を何度も転記する運用で、更新漏れや食い違いが絶えませんでした。そこで情報を1つの統合マスタにまとめ、各書類はそこを参照する形に変えたところ、入力の回数そのものが減り、間違いも自然と減っていきました。書式のテンプレート化は入り口として大切ですが、その先には、一度入れた情報を書類の側が呼び出す形にして、転記そのものをなくすという段階があります。
物件情報や顧客情報を一元管理し、そこから各書式へ流し込む仕組みまで進めると、書式の統一と入力の削減が同時に実現します。書式を整える取り組みは、その入り口として位置づけると迷いにくくなります。ここまで来ると、書式を整える話は、業務全体をどう仕組み化するかという話につながっていきます。
まとめ:正式なひな形を土台に、原本を一元管理する
不動産の書式づくりは、ゼロから作るのではなく、正式なひな形を土台にして自社流に整えるのが近道です。この記事の要点を整理します。
- 書式を揃える効果は、担当者ごとのバラつきと記載漏れを構造的に減らせること
- 購入申込書に統一書式はなく、契約書は全宅連などの団体の様式をたたき台にする
- 賃貸管理委託契約書は、国交省の賃貸住宅標準管理受託契約書を起点にする
- チラシやマイソクは、必要な表示事項が入る枠を選び、おとり広告にならない運用とセットにする
- 書式の原本は1か所で一元管理し、変わる情報と変わらない情報を分けて置く
- 書式が揃った次は、同じ情報を書き写す入力の回数を減らす段階に進む
どこで正式なひな形が手に入るかを押さえ、原本を一元管理する。この2つを守るだけで、書式まわりの手戻りはかなり減らせます。
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