業務改善は重要だと全員が理解している。それでも月末の締め、顧客対応、売上目標、トラブル対応が入るたびに延期されます。改善会議は開催されても、データ準備や検証が進みません。
通常業務を優先するのは、意識が低いからではありません。期限と評価が明確な仕事を先に行うことが、本人にとって合理的だからです。
通常業務と改善活動では確実性が違う
| 通常業務 |
改善活動 |
| 今日の期限がある |
効果が将来に出る |
| 顧客や上司が待っている |
待つ相手が見えにくい |
| やらない損失が明確 |
やらない損失が見えにくい |
| 評価項目に入っている |
善意の追加活動になりやすい |
| 正解が比較的明確 |
試行錯誤と失敗がある |
「時間があるときに進める」では、時間は残りません。
変革への関与と日常業務の継続は両方必要
Huyの研究は、中間管理職が変革へ強く関与するだけでなく、現場の感情や業務継続へ配慮することが組織の適応を支えると示しました。Emotional Balancing of Organizational Continuity and Radical Change
通常業務を軽視して変革を押し込むと顧客対応や品質が崩れます。一方、日常を守るだけでは改善が止まります。両方を同じ計画で扱います。
改善時間を予定ではなく業務配分にする
「毎週水曜に2時間」だけでなく、次を決めます。
- その時間に行わない通常業務
- 代わりに担当する人
- 繁忙期に延期する条件
- 割り込みが起きた場合の再設定日
- 改善時間を守る管理者
- 期間終了後の見直し
予定表へ入れるだけでは、緊急業務に置き換わります。
大きなプロジェクトを検証単位へ分ける
「全社DX」のままでは、日々の進捗が見えません。
今週:一業務の実例を3件集める
翌週:判断条件を整理する
3週目:一担当者で試す
4週目:作業時間と差異を比較する
2〜4週間で、続ける、修正する、止めるを判断できる単位にします。
通常業務の評価と矛盾させない
改善へ週8時間使わせながら、処理件数や売上目標を100%残すと、本人は通常業務を優先します。
- 通常目標を期間中だけ調整する
- 改善による知識移転を評価する
- 試行失敗を減点しない範囲を決める
- 管理者にも時間確保の責任を持たせる
改善参加を本人の自己犠牲にしません。
止まった理由を「忙しい」で終わらせない
- どの通常業務が割り込んだか
- 予定時間を誰が変更したか
- 代替担当はいたか
- 再設定日は決まったか
- 何回連続で延期したか
- 改善対象を小さくできるか
忙しさを構造として記録します。
評価する指標
- 確保予定時間に対する実施時間
- 通常業務から外した作業量
- 延期回数と理由
- 検証単位の完了数
- 判断待ちの日数
- 改善後に減った通常業務
- 改善担当者の残業時間
- 担当者しか答えられない質問数
- 他のメンバーが改善作業を行った割合
会議への出席ではなく、検証と判断が進んだかを測ります。
会社全体の削減時間が大きくても、一人の担当者へヒアリング、データ整理、テスト、問い合わせ対応が集中していれば持続しません。改善対象の業務だけでなく、改善を進める仕事そのものも棚卸しします。
まとめ
改善プロジェクトが通常業務に負けるのは、重要性を理解していないからではありません。通常業務の方が期限、評価、責任が明確だからです。
改善時間を余力へ依存させず、外す業務、代替担当、評価調整、延期時の再計画まで決めます。
DX担当者の権限と決裁体制はDX担当者が経営と現場の板挟みになる理由、現場メリットは業務改善で現場メリットをどう作るかで解説しています。