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内製化 / 公開 2026-09-08

KPIを設定したのに現場が数字合わせを始める理由|目標設計の副作用

執筆・編集:株式会社DataEgg
#KPI#目標管理#業務改善#行動経済学
KPIを設定したのに現場が数字合わせを始める理由|目標設計の副作用

業務改善を進めるために、処理件数、対応時間、入力率、AI利用率などのKPIを設定することがあります。ところが、数字は良くなったのに、未処理が別の場所へ移り、入力だけ行われ、品質や顧客対応が悪化することがあります。

これは現場が不正をしようとしているとは限りません。評価される数字が明確になると、その数字を改善する行動が合理的になるからです。

この記事では、KPIをなくすのではなく、数字が業務目的の代わりにならない設計を解説します。

測った数字が目的へ変わる

たとえば「当日中の処理率」を評価すると、難しい案件を保留箱へ移し、簡単な案件だけを完了させれば数字は上がります。「AI利用率」を評価すると、AIを使う必要がない処理でも形式的に利用できます。

KPI 起こりうる数字合わせ
処理件数 簡単な案件を優先する
対応時間 調査が必要な案件を早く閉じる
入力率 内容を確認せず必須項目を埋める
自動化率 例外も無理に自動処理する
エラー件数 エラーとして記録しない
問い合わせ削減 問い合わせ窓口を見つけにくくする

指標は現実の一部を切り取ったものです。測りやすい部分だけを目的にすると、測っていない価値が落ちる可能性があります。

高い目標は良い行動だけを増やすとは限らない

Schweitzerらは、未達の具体的な目標を持つ参加者が「最善を尽くす」条件より非倫理的行動を取りやすく、特に目標へわずかに届かない場合にその関係が強かったと報告しています。Goal Setting as a Motivator of Unethical Behavior

この研究だけで、KPIが現場の不正を生むと一般化することはできません。しかし、目標達成を強く求めるほど、達成方法と副作用を同時に確認する必要があることを示します。

業務改善でも、短期の数値目標と評価を強く結びつけると、次が起こりやすくなります。

  • 難しい案件を対象外にする
  • 問題を別部署へ移す
  • 数字の定義を都合よく解釈する
  • 一時的な手作業で達成する
  • 例外や失敗を記録しない
  • 長期的な改善より当月の数字を優先する

KPI設計で最初に分ける4つ

1. 本来の目的

「処理時間を減らす」ではなく、なぜ減らすのかを定義します。たとえば、月次締めを早める、顧客への回答を早くする、確認担当の残業を減らす、などです。

2. 観測する指標

目的を直接測れない場合に代理として使う数字です。代理指標であることを明示します。

3. 守る条件

速度を上げても落としてはいけない品質、法令、顧客影響、従業員負担を決めます。

4. 対象外と例外

取消、過去月修正、資料不足、特殊契約など、通常案件と同じ目標を適用しない条件を記録します。対象外を隠すのではなく、理由別に見えるようにします。

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単一指標ではなく対になる指標を見る

改善指標には、速さと品質、量と手戻りのように対になる数字を置きます。

改善したい指標 同時に見る指標
処理件数 誤り・差し戻し件数
処理時間 未処理の滞留時間
自動化率 人による修正率・誤りの影響
問い合わせ件数 未解決件数・顧客満足
入力率 入力内容の欠損・修正率
部署の工数 前後工程を含む総工数

一つの数字が良くなったとき、別の場所へ負担が移っていないかを確認します。

数字の根拠をたどれるようにする

KPIのダッシュボードだけを作っても、元データや除外条件を確認できなければ、数字の解釈を誤ります。

  • 対象期間
  • 対象となる案件
  • 除外した案件と理由
  • 元データの更新時刻
  • 手修正した値と理由
  • 集計ルールの変更履歴
  • 前月と比較できない条件

業務改善では、数字を早く見ることだけでなく、その数字が何から作られたかを戻って確認できることが重要です。

現場とKPIをレビューする質問

  • この数字を上げる最も簡単な方法は何ですか
  • その方法は本来の目的にも役立ちますか
  • 数字を上げるために後回しになる案件はありますか
  • 他部署の作業が増えていませんか
  • 記録されない例外や失敗はありますか
  • 目標未達の理由を安全に説明できますか
  • この指標を評価に使うと行動はどう変わりますか

設定したKPIを説明するだけでなく、現場がどう攻略できるかを先に考えます。

KPI導入後に確認すること

  • 指標と本来の目的が同じ方向へ動いたか
  • 品質、手戻り、未処理が悪化していないか
  • 対象外案件が急増していないか
  • 数字の定義や入力方法が変わっていないか
  • 特定の担当者や部署へ負担が移っていないか
  • 現場が未達理由を記録できているか
  • 指標をやめる、変える判断ができるか

KPIは固定された正解ではなく、業務の変化を観測する仮説として扱います。

まとめ

KPIを設定したのに数字合わせが始まるのは、現場の倫理観だけの問題ではありません。評価される数字を達成するよう行動することは、制度の中では合理的です。

本来の目的、代理指標、守る条件、例外を分け、速さと品質、量と手戻りを対で確認します。数字の根拠と変更履歴をたどれる状態を作り、指標そのものも見直します。

AI利用率と実際の業務負担を分けて考える場合はAI導入後に確認作業が増える理由、部署をまたぐ数字のつながりはバックオフィスDX・AXはバックオフィスだけでは完結しないで解説しています。

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