業務改善を進めるために、処理件数、対応時間、入力率、AI利用率などのKPIを設定することがあります。ところが、数字は良くなったのに、未処理が別の場所へ移り、入力だけ行われ、品質や顧客対応が悪化することがあります。
これは現場が不正をしようとしているとは限りません。評価される数字が明確になると、その数字を改善する行動が合理的になるからです。
この記事では、KPIをなくすのではなく、数字が業務目的の代わりにならない設計を解説します。
測った数字が目的へ変わる
たとえば「当日中の処理率」を評価すると、難しい案件を保留箱へ移し、簡単な案件だけを完了させれば数字は上がります。「AI利用率」を評価すると、AIを使う必要がない処理でも形式的に利用できます。
| KPI | 起こりうる数字合わせ |
|---|---|
| 処理件数 | 簡単な案件を優先する |
| 対応時間 | 調査が必要な案件を早く閉じる |
| 入力率 | 内容を確認せず必須項目を埋める |
| 自動化率 | 例外も無理に自動処理する |
| エラー件数 | エラーとして記録しない |
| 問い合わせ削減 | 問い合わせ窓口を見つけにくくする |
指標は現実の一部を切り取ったものです。測りやすい部分だけを目的にすると、測っていない価値が落ちる可能性があります。
高い目標は良い行動だけを増やすとは限らない
Schweitzerらは、未達の具体的な目標を持つ参加者が「最善を尽くす」条件より非倫理的行動を取りやすく、特に目標へわずかに届かない場合にその関係が強かったと報告しています。Goal Setting as a Motivator of Unethical Behavior
この研究だけで、KPIが現場の不正を生むと一般化することはできません。しかし、目標達成を強く求めるほど、達成方法と副作用を同時に確認する必要があることを示します。
業務改善でも、短期の数値目標と評価を強く結びつけると、次が起こりやすくなります。
- 難しい案件を対象外にする
- 問題を別部署へ移す
- 数字の定義を都合よく解釈する
- 一時的な手作業で達成する
- 例外や失敗を記録しない
- 長期的な改善より当月の数字を優先する
KPI設計で最初に分ける4つ
1. 本来の目的
「処理時間を減らす」ではなく、なぜ減らすのかを定義します。たとえば、月次締めを早める、顧客への回答を早くする、確認担当の残業を減らす、などです。
2. 観測する指標
目的を直接測れない場合に代理として使う数字です。代理指標であることを明示します。
3. 守る条件
速度を上げても落としてはいけない品質、法令、顧客影響、従業員負担を決めます。
4. 対象外と例外
取消、過去月修正、資料不足、特殊契約など、通常案件と同じ目標を適用しない条件を記録します。対象外を隠すのではなく、理由別に見えるようにします。




