SIPOC分析とは?業務プロセスを5要素で可視化する方法
「業務の全体像が見えない」「どこに問題があるのかわからない」。こうした悩みを抱えるマネージャーや経営者の方は多いのではないでしょうか。
SIPOC分析は、業務プロセスを5つの要素に分解して可視化するフレームワークです。複雑に見える業務も、SIPOCの枠組みに当てはめることで、関係者全員が共通認識を持てるようになります。
この記事では、SIPOCとは何かという基本から、SIPOC図の具体的な作り方、実際の業務での活用事例までを解説します。業務改善や業務の仕組み化の第一歩として、ぜひ参考にしてください。
SIPOCとは
SIPOCとは、業務プロセスを構成する5つの要素の頭文字をとったフレームワークです。もともとはシックスシグマ(品質管理の手法)で使われていた考え方ですが、現在は業種を問わず幅広く活用されています。
5つの要素は以下のとおりです。
S:Supplier(サプライヤー)
プロセスに必要なインプットを提供する人や組織のことです。社内の他部署、外部の取引先、顧客自身がサプライヤーになることもあります。
たとえば、営業プロセスであれば「マーケティング部門」がリード情報を提供するサプライヤーにあたります。
I:Input(インプット)
プロセスを動かすために必要な情報・資材・データのことです。サプライヤーから受け取るものすべてが該当します。
具体的には、顧客リスト、原材料、申請書類、問い合わせ内容などがインプットです。
P:Process(プロセス)
インプットをアウトプットに変換する一連の作業や手順のことです。SIPOCでは、プロセスの詳細を掘り下げるよりも、主要なステップを5〜7個程度で大まかに捉えることが重要です。
細かい手順はSIPOC分析の後に、別途フロー図などで整理します。
O:Output(アウトプット)
プロセスを通じて生み出される成果物やデータのことです。完成品、レポート、承認済み書類、処理済みデータなどが該当します。
アウトプットの品質が、最終的にカスタマーの満足度を左右します。
C:Customer(カスタマー)
アウトプットを受け取る人や組織のことです。社外の顧客だけでなく、社内の後工程の担当者もカスタマーに含まれます。
「誰のために、この業務を行っているのか」を明確にすることが、SIPOC分析の出発点になります。
SIPOC分析が有効な場面
SIPOC分析は、どのような状況で特に力を発揮するのでしょうか。代表的な活用場面を紹介します。
業務改善プロジェクトの初期段階
業務改善に取り組む際、いきなり細部に入ると全体像を見失いがちです。SIPOC図を使って業務の全体像を俯瞰することで、改善すべきポイントの優先順位が明確になります。
業務改善コンサルティングの現場でも、最初にSIPOCで全体像を把握してから、具体的な改善施策に入ることが多いです。
新プロジェクトや新業務の立ち上げ
新しいプロセスを設計する際に、関係者の認識を揃える手段としてSIPOC分析は有効です。「誰が何を提供し、何を受け取るのか」を最初に定義しておくことで、後から「聞いていない」というトラブルを防げます。
部門間の連携が複雑な業務
複数の部署が関わる業務では、それぞれの役割や受け渡しが曖昧になりやすいです。SIPOCで各部門の関係性を可視化すると、責任範囲のグレーゾーンが浮き彫りになります。
業務の引き継ぎや標準化
担当者が変わるタイミングで、SIPOC図があると引き継ぎがスムーズです。業務の全体像と関係者を一枚の図で共有できるため、新任者の理解が早まります。
SIPOC図の作り方
ここからは、SIPOC図を実際に作成する手順を解説します。テンプレートとしても活用できるよう、ステップバイステップで説明します。
ステップ1:プロセスを特定する
まず、分析対象となるプロセスを決めます。「受注処理」「クレーム対応」「月次レポート作成」など、始点と終点が明確な業務を選びましょう。
最初は範囲を広げすぎず、1つの業務に絞ることが大切です。
ステップ2:プロセスの主要ステップを書き出す
対象プロセスの主要なステップを5〜7個で書き出します。ここで細かくしすぎないことがポイントです。
たとえば「受注処理」なら、以下のようになります。
- 注文内容の確認
- 在庫の照合
- 見積書の作成
- 顧客への承認依頼
- 受注登録
- 出荷指示
ステップ3:アウトプットを定義する
プロセスから生まれる成果物を明確にします。「受注処理」であれば、「受注確認書」「出荷指示書」「売上データ」などがアウトプットです。
ステップ4:カスタマーを特定する
アウトプットを受け取る人を洗い出します。社外顧客だけでなく、社内の後工程の担当者も忘れずに記載します。「出荷部門」「経理部門」なども立派なカスタマーです。
ステップ5:インプットを洗い出す
プロセスを実行するために必要な情報やデータをリストアップします。「注文書」「顧客マスター」「在庫データ」「価格表」などが該当します。
ステップ6:サプライヤーを特定する
各インプットを誰が提供しているかを明確にします。「顧客」「営業部門」「倉庫管理システム」など、人だけでなくシステムもサプライヤーになり得ます。
ステップ7:SIPOC図としてまとめる
以上の情報を、S→I→P→O→Cの順番で一枚の表にまとめます。スプレッドシートやホワイトボードを使って、横一列に並べるのが一般的です。
SIPOCテンプレートの基本構成は以下のとおりです。
| Supplier | Input | Process | Output | Customer |
|---|---|---|---|---|
| 顧客 | 注文書 | 注文内容の確認 | 受注確認書 | 顧客 |
| 営業部門 | 顧客マスター | 在庫の照合 | 出荷指示書 | 出荷部門 |
| 倉庫管理システム | 在庫データ | 見積書の作成 | 売上データ | 経理部門 |
筆者が営業代行会社の業務改善に関わった際も、最初にこのSIPOC的な視点で業務全体を俯瞰しました。フォーム営業の管理をスプレッドシートから統合マスタへ、さらに自動化へと段階的に仕組み化していったのですが、最初にSIPOC図を作ったことで「どこから手をつけるべきか」が明確になりました。この経験から学んだのは、「入力を強いない、自然とデータが溜まる設計」の重要性です。
SIPOC分析の具体例
ここでは、実際の業務にSIPOC分析を当てはめた具体例を紹介します。
例1:フォーム営業の業務フロー
営業代行のフォーム営業業務をSIPOCで整理すると、以下のようになります。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| S(サプライヤー) | 営業企画チーム、リスト作成ツール |
| I(インプット) | ターゲットリスト、営業文面テンプレート |
| P(プロセス) | リスト精査→文面カスタマイズ→フォーム送信→反応記録→フォローアップ |
| O(アウトプット) | 送信完了レポート、反応リスト、アポイント獲得数 |
| C(カスタマー) | 営業マネージャー、クライアント企業 |
この例では、「反応記録」のプロセスがボトルネックになっていました。手動での記録に時間がかかり、データの抜け漏れも発生していたためです。SIPOCで可視化したことで、このプロセスの自動化を優先すべきだと判断できました。
例2:宿泊事業の横断管理
筆者が宿泊事業にbizOps的に参画した際の事例です。複数の施設を運営する中で、施設ごとにバラバラだった運営データを統合する必要がありました。
SIPOCの枠組みに当てはめると、以下のように整理できます。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| S(サプライヤー) | 各宿泊施設、予約プラットフォーム、清掃業者 |
| I(インプット) | 予約データ、稼働実績、清掃スケジュール、売上情報 |
| P(プロセス) | データ収集→統合→集計→分析→レポート作成 |
| O(アウトプット) | 施設別稼働率レポート、収益分析ダッシュボード |
| C(カスタマー) | 経営層、各施設の運営マネージャー |
「S(サプライヤー)」に各施設、「P(プロセス)」に運営業務、「O(アウトプット)」に稼働率データを当てはめることで、複雑に絡み合っていた業務の構造が見えてきました。結果として、横断管理ツールを構築し、施設間のデータ比較や意思決定のスピードが向上しました。
SIPOCを活用した業務改善のポイント
SIPOC図を作って終わりではなく、そこから業務改善につなげることが重要です。ここでは、SIPOCを活用して業務を改善するためのポイントを紹介します。
ボトルネックの特定から始める
SIPOC図を眺めると、「ここで情報が滞留している」「このインプットの品質が低い」といったボトルネックが見えてきます。改善は、最もインパクトの大きいボトルネックから着手するのが効果的です。
すべてを一度に変えようとすると、かえって混乱を招きます。1つずつ、段階的に改善を進めましょう。
BOATの視点でSIPOCを拡張する
SIPOCで業務を整理した後は、BOATの視点で改善の方向性を検討すると効果的です。BOATとは、以下の4つの観点で業務を見直すフレームワークです。
- B(Business process):業務プロセスそのものを見直す。不要な工程はないか、順序は適切か
- O(Operations):日常の運用を最適化する。作業の標準化やルールの整備
- A(Automation):繰り返しの作業を自動化する。手動入力やデータ転記の削減
- T(Technology):テクノロジーを活用する。ツール導入やシステム連携
SIPOCで全体像を把握し、BOATの視点で各プロセスの改善策を検討する。この組み合わせにより、場当たり的ではない体系的な業務オペレーションの改善が可能になります。
インプットの品質に注目する
アウトプットの品質は、インプットの品質に大きく左右されます。「アウトプットが期待どおりにならない」という場合、プロセスだけでなくインプットの品質を確認してみてください。
たとえば、レポートの精度が低いなら、元データの入力ルールが曖昧な可能性があります。データの入力方法を標準化するだけで、大幅な改善が見込めることも少なくありません。
カスタマー視点で価値を見直す
SIPOCの「C(カスタマー)」に立ち返り、「このアウトプットは本当にカスタマーが求めているものか」を問い直すことも大切です。
作り手の都合で設計されたプロセスは、往々にしてカスタマーにとって不要なアウトプットを生み出しています。カスタマーが求めていないものを効率的に作っても、意味がありません。
ツールと組み合わせて運用する
SIPOC図は紙やホワイトボードでも作成できますが、継続的に活用するならデジタルツールとの連携が有効です。スプレッドシートで管理すれば更新も容易ですし、業務効率化ツールを組み合わせることで、SIPOC図で特定した改善ポイントをそのまま仕組みに落とし込めます。
筆者の経験では、SIPOC図をスプレッドシートで作成し、各プロセスの改善状況をステータス管理する方法が、チームでの共有にも適していました。
まとめ
SIPOC分析は、業務プロセスをS(サプライヤー)・I(インプット)・P(プロセス)・O(アウトプット)・C(カスタマー)の5要素で可視化するフレームワークです。
複雑な業務も、SIPOCの枠組みに当てはめることで全体像が明確になり、改善の優先順位が見えてきます。特に、業務改善プロジェクトの初期段階や、部門間連携が複雑な業務の整理に効果的です。
SIPOC図を作る際は、まずプロセスを特定し、主要ステップを5〜7個で書き出すところから始めてください。そこからアウトプット、カスタマー、インプット、サプライヤーの順に埋めていくと、スムーズに完成します。
作成した図は、BOATの視点で拡張し、段階的な業務改善につなげていきましょう。
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