入力ミスが起きるたびに確認欄を増やし、不正が疑われるたびに承認者を増やし、問い合わせが来るたびに報告項目を増やす。個々の対策はもっともでも、数年後には通常案件まで多段階の承認が必要になります。
改善が業務を軽くするとは限りません。失敗を避ける対策だけが追加され、対策をやめる判断がないと、仕組みは重くなります。
ルール追加は説明しやすく、廃止は説明しにくい
問題が起きた直後は「再発防止として確認を増やす」という判断が支持されやすくなります。一方、ルールを減らして再発すると、廃止を決めた人の責任が問われます。
そのため、使われていないルールでも残す方が個人には安全です。
自由を狭めるほど抜け道が生まれることもある
心理的リアクタンスの理論では、行動の自由が制限されると、その自由を回復しようとする動機が生じるとされます。Psychological Reactance: A Theory of Freedom and Control
業務ルールへ単純に当てはめることはできませんが、理由が理解できず裁量だけが奪われると、別Excel、後追い入力、代理承認などの回避行動が起きる可能性を考える必要があります。
ルールを追加する前に4点を記録する
- 防ぎたい事象
- 発生頻度
- 発生した場合の影響
- そのルールで検出できる根拠
一件の重大事故と、頻発する軽微ミスでは対策が異なります。
全件統制以外の選択肢を持つ
| 対応 |
向く状況 |
| 全件承認 |
影響が大きく自動検出できない |
| 条件付き承認 |
金額・顧客・状態でリスクを絞れる |
| 自動検出 |
ルールで異常を判定できる |
| 標本確認 |
発生頻度を監視したい |
| 事後監査 |
取り消し可能で即時性を優先する |
| 教育・画面改善 |
入力方法が原因になっている |
承認を増やす前に、原因を取り除けないか確認します。
既存ルールを棚卸しする
| ルール |
追加理由 |
最終発生 |
検出件数 |
通常業務の負担 |
判断 |
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継続・変更・廃止 |
追加理由が分からないルールは、すぐ削除せず、過去の事故や契約・法令上の必要性を確認します。
すべてのルールに見直し日を付ける
恒久ルールとせず、3か月後などに確認します。
- 対象事故は再発したか
- ルールで実際に検出できたか
- 誤検知は何件あったか
- 待ち時間はいくら増えたか
- 自動化や対象限定へ変えられるか
- 回避行動が生まれていないか
問題がないことだけでルールの効果とは判断しません。元々の発生頻度も比較します。
承認者の人数ではなく判断の質を見る
承認者が増えても、全員が前の人を信頼して形式的に押すだけならリスクは下がりません。
- 各承認者が見る項目
- 却下できる条件
- 判断に必要な資料
- 不在時の対応
- 承認結果の監査
同じ確認を複数人が繰り返さないようにします。
まとめ
改善するほどルールが増えるのは、追加には再発防止という説明があり、廃止には個人責任の不安があるからです。低頻度の例外対策を全件へ広げると、通常業務まで重くなります。
影響と頻度を分け、条件付き承認、自動検出、標本確認などを選びます。ルールには追加理由と見直し日を残します。
AIによる例外確認はAI導入後に確認作業が増える理由、マニュアルと判断表の分け方は業務マニュアルを作っても読まれない理由で解説しています。